ヘルメット
今日現在、ヘルメットも多種多様になった。
ヘルメットは1975年に日本では着用が義務化され、オートバイ用のヘルメットメーカーも沢山興り市場で販売されるようになった。
そこで「さて、ではどのようなヘルメットにしようか?」とライダー達もヘルメットについて考えるようになった。
70年代は若者の時代だった。と言っても過言ではない。ロック、フォークといった音楽が興り、サイケデリックにはフォークロア、正統派にはIVY LOOKといったファッションが広がり、ディスコやカフェといった社交場が出来、そして山登りやサーフィンといったスポーツが盛んに行われ若者達はアウトドアライフを楽しみ、次々に日本に上陸してくる海外の文化を取り入れ、若干の時差はあったものの世界のトレンドに直結するようになった。
そうなると当然の事ながらヘルメットを被る時、ファッションとの兼ね合いを考えないわけにはいかなくなった。
何かを探すなら「ソトコト」というこの時代、ライダーの目もまたアメリカに向き、そこで人気があるヘルメットを日本で使用するようになった。
当時のアメリカはハーレーはもちろん不動の人気を誇っていたが、ホンダのCB、そしてYAMAHAのXLなどは徐々に人気を上げてきていて、特にスティーブ マックィーンやボブ ディランが乗っていた事から英国のトライアンフは絶大なる人気を獲得した。
スティーブ マックィーンは当時ホンダのオートバイのCMにも出演していて、日本のライダーたちを喜ばせたりもした。
そんなアメリカン カルチャーに乗って日本にやってきたのが、アメリカのヘルメットメーカーBELLだった。 アメリカにはシンプソンといったメーカーをはじめ幾つかのヘルメットメーカーがあるが、やはりBELLの右に出る者はいない。どうしてなのかという理由の一つに、BELL HELMET 社は今現在世界中で普通に売られているフルフェイスのヘルメットを最初に作ったメーカーだからだ。発売当時、このヘルメット(製品名:STAR)は「宇宙使用だ」とか「近未来のモノだ」と世間に揶揄されたりした。それほど時間軸を超えている代物だった。そのBELLがアメリカで盛んに行われるようになったオフロードレース用にBELL MOTO STAR というフルフェイスのヘルメットを製品化した。これによって史上初のオフロード用フルフェイスヘルメットが誕生した。オートバイムービーとして今でも伝説的な扱いになっている1971年上映の映画「ON ANY SUNDAY」でブルース ブラウンが使っていたのもこのモトスターだった。
その後MOTOシリーズは進化し、80年代を迎えてMOTO 3が発売され、その特徴的なツバの長いバイザーにゴーグルを合わせることでモトクロスにおけるアイコニックなスタイルが完成した。
先ほどのマックィーンがCM出演していたホンダのエルシノアをこの時代(70年代)に所有していたならば、きっとライダー達はBELL MOTO STARを、その時代が80年代であればMOTO 3を選んだに違いない。
昨年、長い間生産中止になっていたこのBELL MOTO 3が復刻した。 外観上は80年代の当時と変わりなく、素材や機能面で充実を計ったようだが、このヘルメットは一つの時代のアイコンであるだけに進化も望ましいところだけども、あの時代の空気を残しててくれているのはなんとも嬉しい限りだ。 BELLは今も消費者マインドを捉えている。そしてファッションとオートバイの触媒として十分に働くように作られている。
アドベンチャースタイルのオートバイ乗りにとって、最新のデザインとハイパフォーマンスでできたヘルメットも良いが、このレトロスペクティブなスタイルは何かホッとするものが漂う。それでいて時代遅れの風貌では全くない。80年代に作られた近未来型ヘルメットは2018年にちょうど旬を迎えていると言っても言い過ぎではないように思う。